⑥-2 手術当日【腹腔鏡下子宮全摘出術の実際】

■手術当日(手術前)の予定

○目標:手術について理解し安心して手術を受ける

○治療・処置:診察時はナプキン持参、点滴前に肌着やブラジャーを脱いでパンツのみ着用、10時点滴開始、手術開始30分前にトイレを済ませ血栓予防のストッキングを履く

○食事:10時までは水やお茶を飲める

○安静(排泄):できるだけベッドで安静に

○保清:歯磨き、朝シャワーを浴びる

○説明:貴重品は家族に預ける、手術時間が変更になった場合に備えて家族は早めに来院する、時計・指輪・ピアス・入れ歯は外す、長髪は横に1つに結ぶか2つに分けて結ぶ、歩いて手術室へ行く

 

■手術当日(手術後)の予定

○目標:痛みのコントロールができる、麻酔の副作用が少ない、創部に異常がない

○治療・処置:13時処置・手術開始、酸素マスク・点滴(2カ所)・お腹の管・痛み止め管・心電図・尿の管・フッドポンプを装着

○食事:絶飲食

○安静(排泄):手術室で尿の管がはいる、ベッド上安静(体の向きは変えられる)、体の向きを変える、動かしたいときはナースコールで知らせる

○保清:特になし

○説明:家族は手術のあいだ控え室で待つ、付き添いは必要なし、体にチューブなどが入っているので触らない、適宜足の運動を行う、痛みが強かったり吐き気などがあれば知らせる

 

■実際の流れ

5時30分、排便。水っぽい。

7時15分、排便。ゆるいかたまり。

7時30分、歯磨き。

8時30分、シャワーを浴びる。

9時、主治医が回診。体調確認だけで内診なし。

10時、これ以降、絶飲。

11時、点滴開始(このときは栄養剤のみ)。診察室で執刀医による内診とエコー。右の卵巣が腫れている。病室で看護師と話をする。髪を結ぶ。

11時40分、薬剤師が病室訪問。術後、抗生剤をつかうと下痢や便秘になることがあるのでつらければ知らせる。

13時、歩いて手術室へ。手術台の上で横向きになって背中に注射。

(16時30分頃、手術終了。麻酔で意識なし)

18時、病室で意識が戻るが、またすぐ寝る。

19時、目を開けて、すこしだけ話せるようになる。

22時、メールが打てるようになる。

23時、おならが出る。息が苦しい。

~3時頃まで、何度も寝返りをうつ。睡眠薬を点滴してもらうことにする。

 

■感想

・装着物は(点滴、チューブなど)8カ所。体からいろんなチューブが出ていて、固定されている。動きたくても動けない。とらわれた宇宙人みたい。これがわたしを生かしてくれているんだ、という驚き。

・術前はできるだけベッドで安静に、ということだったが緊張をほぐすためにストレッチをした。

・子宮内膜全面搔爬術のときに担当してくれた看護師Aさんが、今回の術前にも担当だった。「子どもが好きっておっしゃってたから、まさか子宮を摘出するとは……」と戸惑い気味の反応だった。わたしは「自分の子どもじゃなくてもかわいいし、教育や育てるところで関われたらいいんで」と答えたけど、このときなぜか涙が出てきた。前回も手術前におなじことを言って涙が出てきたんだと思い出す。

・手術室には、看護師や麻酔科医など10人以上の人がいた。こんなにたくさんの人が私の体を治してくれるんだと思うと心強かった。ガイド役の看護師が「ここにあがってください」「横を向いて」など言ってくれるのでその通りに動いた。

・手術台の上にあがって、横向きで背中を丸める。おへその裏よりすこし上あたりに局所麻酔の注射を打つ。硬膜外麻酔を意識がある状態で注射するのは、確かな位置に針が入っているかを確認するため。なので痛かったら知らせるようにと言われた。「眠くなりますよ」と言われて20秒くらいで意識がなくなった。

・18時に病室ですこし意識が戻ってから、はっきりと意識を保って動けるようになるまで4時間ほどかかった。目を開けたとき視界がぼやけて見えなかった。これは眼球が乾燥しないように手術中に保湿クリームを目のあたりに塗ったのが残っていたから。

・喉に痰がからんだみたいに息が苦しい。人工呼吸器をつけていたかららしい。咳き込むとお腹がきゅっと痛むので、ゆるゆるとしか咳ができない。あまりに苦しいので看護師に言って酸素マスクを外させてもらった。

・術後は1時間おきに看護師が状態を確認しに来る。ずっと仰向けで腰や背中が痛いので、丸めたバスタオルを背中に沿わせてもらい、背中の片側を浮かせて圧抜きしてもらう。

・体の向きを変えられるようになると、胃やあばらのあたりの痛みに気づく。背中からの麻酔で下半身の感覚はないが、寝返りをうつと左足が麻痺して動かない。

・手術してずっとおなじ体勢でいると腸閉塞や内臓が癒着が心配で、頻繁に寝返りをうつようにした。その際、左手の点滴チューブが体の下で潰れたり、ねじれたりすると警告音が鳴る。気をつけているつもりでも、夜中に寝返りをうつたびに鳴ってしまいナースコールを押すはめに。

・術後は電気毛布や温めた点滴をいれるせいで、とにかく暑くて大量に汗をかいた。電気毛布をとってもらい、掛け布団もはいで、クーラーをつけてもらった。

・時間が経つのが遅い。寝たくても背中や腰、あばらや胃の痛みで眠れない。夜中の3時くらいに睡眠薬の点滴を提案されてお願いした。ぐっすりとはいかなかったが、6時くらいまではうとうとできた。

・術後から腹帯がつけてあった。腹部を支えて、傷口を守ってくれているという安心感はあるが、苦しいし暑いしかゆい。