⑥あっというまに【手術前夜・手術当日】

*手術前日*

9時前、荷物を抱えて病院に到着。

体重・検温・血圧を測定して、採血する。腕に氏名と生年月日の入ったバンドをつけた。4人部屋を希望していたのに、なぜか個室に案内される。慌てて確認すると、この病院では婦人科の手術を行う場合は個室になるとのこと。差額の病室代は無料らしい。トイレとセットのシャワールームが車椅子では入れる仕様で広い。

 

10時30分、主治医が病室に来て、再度手術の説明を受けた。今日は食事制限はないという。荷物を整理してフロアを歩いてみる。テレビカードを購入した。

 

12時、昼食。メニューは、白ごはん140グラム・煮魚・キャベツとにんじんのわさび醤油和え・しゅうまい・みぞれ汁。けっこうおいしい。

 

13時30分、麻酔科の医師が病室に来て、どの麻酔方法がいいか決める。

全身麻酔の最大のメリットは寝ている間に手術が終わるということ。しかし自発呼吸がなくなるので、肺や心臓に疾患があるとできない。心臓や心電図に異常があると言われたことはないか、薬アレルギーやぜん息はないか。また近親者に薬アレルギーの人や、筋肉が動かなくなる病気の人がいないか聞かれた。

脊髄麻酔は下半身の感覚を麻痺させて意識がある状態で手術する。体を丸めて腰の神経に注射する。注射針は細いが、穴がふさがるまでに1週間ほどかかる。なかには頭痛や吐き気がする人もいるとのこと。

意識がある状態で手術なんてこわすぎるので、全身麻酔をお願いして麻酔承諾書にサインする。全身麻酔では呼吸器を装着するため、顎関節症などがないか、口が開くか確認された。術後には喉に違和感があったり声が嗄れるたりするが数日で治ると説明を受ける。

続けて手術室の担当者、主治医が様子を見に来てくれた。

看護師からお通じの回数を聞かれる。

 

これ以後、特に何もなくフリーで過ごす。

売店に行ったり、読書したりテレビをつけたりしたが、だんだん飽きてくる。

これなら午後入院でもいいのではないかと思うくらい暇だった。

 

17時30分、ちょっとはやいがシャワーを浴びる。ドライヤーは共同浴室から借りた。

 

18時、夕食。白ごはん140グラム・麻婆豆腐・中華風サラダ・ポテトの丸焼き・オレンジ。24時以降は絶食。翌日の朝7時から絶飲食とのこと。

 

21時30分、消灯。個室なので消灯後も音を出してテレビを見ることができた。寝付きはよかったが、ナースステーションの呼び出し音が夜中に何度も響いて目が覚めた。

 

*手術当日*

7時から絶飲食。

 

8時30分、ショーツ以外を脱いで手術着に着替え、病院でもらった弾性ストッキングを着用する。膝下までのきっつい靴下は、静脈血栓寒栓症を予防するため。手術後に一番こわいのは、足の静脈内に血のかたまりができて血流が妨げられることらしい。

 

9時、歩いて手術室へ。ドラマでよく見る大きな無影灯を見て、なぜかドクターXを思い出す。BGMにドリカムの「やさしいキスをして」が流れていた。

手術台の上にあがって寝転ぶ。

点滴で導入の麻酔をする。手の甲に注射針を刺すのだが、めちゃくちゃ緊張していたので血管が収縮して刺さらないというハプニングが起きた。「ライト持ってきて」という声とともに手の甲が照らされ、再度トライ。

すぐに眠くなり、全身がしびれ始めた。

唇や舌もしびれだしたので「え、こわい! どうしよう!」とプチパニックになった。しかし、話す暇もなく10秒ほどで意識が切れた。

 

はっと意識が戻る。

「わかりますか~?」という声が聞こえ、反射的に「はい」と言う。手術室だったがすでに呼吸器は外れていて、風邪を引いたときみたいに喉がイガイガする。「手を握ってください」と言われ握ると、下に敷いてあるシーツごと寝たままベッドに移される。手の甲の点滴はそのままついていた。尿パックもついていた。夜用ナプキンをつけたショーツをはかせてもらっていたが、この日はずっと手術着のまま。

 

10時30分、病室に戻り、主治医から「傷口は痛みますか」と聞かれる。痛いというと、点滴に痛み止めを追加してくれるとのこと。

(翌日わかったことだが、術部というより尿管にささった尿パックの管が斜めに入っているのが痛かったみたい)

横になったまま寝たり目が覚めたりを繰り返す。

 

11時、部屋が暑く感じる。お腹がすいて、ずっと鳴っている。

 

14時、血がつたう感触がする。切除した部分が癒着しないように管をいれたので血が出てきやすくなっているらしい。横を向いてもいいと言われたので左右にごろごろする。足や足首を動かして血栓症予防をする。

 

15時、術後いきなり起き上がると気分が悪くなるということで、ベッドを30度ほど起こして水を飲む。ストローをもってきてよかった。

 

17時、主治医が手術の様子を教えてくれる。

円錐切除は成功。術部は病理にまわして浸潤していないか検査するとのこと。

びっくりしたことに、血のかたまりがごろごろ出てくると訴えたことをうけて、完全ではないが厚くなっていた子宮内膜をかき出す、搔爬(そうは)をしてくれたらしい。その際、子宮内にポリープのようなものがあったと言われた。内膜も病理にまわして検査すると言われて、力説して本当によかったと思った。

 

夜じゅう何度も目が覚める。

目が覚めるたびに足を動かしておく。

点滴の針は柔らかいので手を動かしても大丈夫と言われたが、寝返りのたびに手の甲の点滴針が抜けそうでそわそわする。

尿パックの管も気になる。

しかもこの日はずっと横になったままで、すんごい腰が痛い。

昨夜に引き続き、ナースステーションの呼び出し音が響いている。