⑥-9 心は行きつ戻りつ【腹腔鏡下子宮全摘出術の2年半後】

2021年に腹腔鏡下子宮全摘出術を受けて、2年半が経過した。

 

病気が発覚してから手術するまでは緊張しまくっていた。

未知=不安

落ち着かなくて、とにかく病気や手術について知るために、

ネット検索をしまくったり、本を読んだりした。

入院から退院までどういった流れなのかを知れば、すこしは安心するだろうと思ったからだ。

 

手術を受けた人の「感想」はいくつも見つかった。

病院などのホームページには、「原因と症状と手術方法」についての説明がある。

 

だが、実際に検査や入院や手術でどういうことが行われるのかは分からなかった。

 

だったら、私が記録して、整理して、公開すればいいじゃないか!

ということで、排便の記録まで公開するに至った。

 

さて、手術を終えて2年半たった今。

おへそ両横にあった2つの丸い傷跡はきれいに消えた。

おへそにある縦傷と下腹3箇所の傷跡はまだ残っているが、皮膚に馴染んできている。

排尿時の違和感もなくなった。

 

心はどうだろうと考えると、

わたしの場合は大きく揺さぶられ、不安定になることが多々あった。

 

当時、あれだけ自問自答して決めた全摘手術だったのに、

いざ退院して家に帰ると、ちょっとしたことにも過敏になっている自分に気づいた。

赤ちゃんや子どもの姿や声に、親子仲睦まじい後ろ姿に、

体が固まり、心のどこかがむずむずして決壊しそうな感覚がわいた。

 

決定的だったのは、退院してまもなく隣の部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえるようになったことだった。

 

薄い壁から、ベランダから、換気扇から、

家のどこにいても昼夜問わず響き渡る泣き声と、

それをあやす両親の声が聞こえてくる。

 

干された新生児用の服や、飛ばされて落ちた子供服に、

だんだん傷口に塩を塗り込まれているような気分になった。

 

後悔と嫉妬と自分責め、なにより母子責めの嵐で心が荒れ狂い、

気づくと涙がつたうようになっていった。

 

だって子どもは、

かわいくて、憎らしくて、

やっぱり愛しい。

 

今でも、新生児を見かけると、ちょっとだけ苦しい。

新生児を抱く母親の、充実と疲労と幸せが入り交じった顔を見ると、

正直かなりうらやましい。

 

でも少なくとも今は、

「そういう気持ちを抱いたままでもいいよね」と思えるようにもなっている。

 

苦しくて、

うらやましくて、

どうにも切なくて、

時々泣いてしまう自分がいてもいいよね。

そういう自分で生きていけばいいよね。

 

きっとこれからも心の振り子が行きつ戻りつするのだろうけど、

その時は、その時の自分が何とかしてくれると信じて。

 

最後に。

これから手術される方、知り合いが手術をされるという方、

きっと心配だし、不安だし、緊張していますよね。

私も手術直前まで、そうでした。

 

でも、手術部屋に入ったとき、ちょっと安心したんです。

なぜなら、お医者さんや看護師さんなど、想像以上の人数が部屋に待機していたから。

 

この方たちが、私のために全力を尽くしてくれる。

だったら私は、全力で治ろうって。

 

心から応援しています。