③待ったなし【高度異形成と上皮内癌】
精密検査の結果、手術をする転院先を決めることになった。
単身赴任で一人暮らしなら、入院・手術前後・通院・緊急の際に行きやすい病院がいいのではないか。
頭の片隅に浮かんだ声を優先して、「通いやすい」という一点のみで決めた。
手術件数の多い病院と迷ったが、結果的に自分の都合を優先して正解だった。
運命の女神が待っていたのである。
転院先の初診当日。
緊張しながら診察室のドアを開けると、思わず笑みがこぼれた。
女医である。
それまで通った(産)婦人科では男性医師ばかりで、
同性のほうが内診も抵抗がないだろうし、相談しやすいだろうなと夢見ていたのである。
ここへきて女医に診てもらいたいという願いが叶った。
診察の短いやりとりで好感を持った。
物腰は柔らかだが、さっぱりきっぱり言うべきことを簡潔に教えてくれる人だと思った。
その後、内診台で子宮頸部細胞診後の精密検査を受けた。
酢酸をつけることで病変部を確認して生検を行うらしい。
男性医師の内診は少なからず抵抗感があったが、今回はリラックスして受けられた。
しかし拡大鏡での確認中、一気に背筋が凍った。
「ああ~。けっこう広がってますね。あとで画像を見せます」
検査後は、50センチほどの止血ガーゼを入れられた。
(ちなみにガーゼの先は膣から出ていて、半日後に自分で引き抜く。歩くのに違和感があるし、用を足すにも気を遣う)
内診台から診察室に戻って画像を見せてもらった。
「この白く浮き出た部分が病変です」と言われたが、そもそも白く浮き出た部分の見分けがつかない。
恐るべし医師の観察眼。
術前検査は年明けに、手術は1月下旬になった。
最後に念押しされた。
「円錐切除術は子宮の入り口を円錐状に切り取ります。
子宮は残るので妊娠はできますが、術後、半年から一年は避妊してください。
この手術で流産するリスクが高くなるということは覚えておいてくださいね。病院によっては、子宮口をしばって胎児が流れないように処置してくれるところもあるようですが。
きっと聞きたいことがたくさん出てくると思うので、次回の診察までに質問をまとめておいてください」
仕事の段取りも含めて、やることは山積みだった。
気もそぞろな三が日を過ごし、あっという間に術前検査日になった。
検査を終えて診察室に行くと、初診日に採取した組織の検査結果を知らされた。
「クリニックでの検査結果は高度異形成ということでしたが、今回の結果では高度異形成と上皮内癌に進行している部分も見つかりました」
高度異形成が発覚してから、わずか二ヶ月のことである。